採用の本質について考えた



前回の記事、楽しく仕事をするには では、「仕事における楽しさ10要素モデル」を提示しました。
これを「採用活動」に応用したのが今回の記事になります。
昨今の人材不足の影響もあり、現在の採用活動は深いマッチングができているという会社は少ないのではないかとも思います。
しかし本来的には本人のやりがいや生き方と、会社の向いている方向性が深く一致した時にこそ高いパフォーマンスが発揮できるはず。
「何に楽しさを感じるのか?」という概念を「自分らしさとは何か?」という軸に紐づけて考えることで、このマッチングの問題を解決しようという試みです。
採用活動における 「らしさ」言語化フレームワーク の探求
本フレームワークについて
これから論ずるのは、採用における「雰囲気でのマッチング」を可能な限り言語化し、本質的なマッチングを実現することを目的としたフレームワークである。
帰属を基盤として、仕事の楽しさを構成する10の要素について自社の「らしさ」を整理し、それを見極める面接質問を設計する。スキルや価値観の表層的な一致ではなく、「原体験の共鳴」を見ることで、合う/合わないを早く誠実に見つける。
不幸なミスマッチを減らし、会社も個人も活きる場所を見つけるための思考の道具である。
第1部:理論的基盤
1. 問題意識
1.1 従来の採用の限界
「できること」「やりたいと言っていること」ベースの採用は長続きしない。
プログラミングができる人を採用しても、会社そのものへのマッチングが薄いと定着しない。仕事内容は好きだけど、なんか違う。成果は出ているのに、なぜか満たされない。そういった違和感を抱えながら働く人は少なくない。
採用は結局「雰囲気」で判断している部分がある。それ自体は間違っていない。しかし、その雰囲気の正体を言語化できていないから、マッチングの精度が上がらない。
1.2 本質的なマッチングの二軸
本質的なマッチングには二つの軸がある。
| 軸 | 定義 |
|---|---|
| 目的の一致 | 自分の生きる理由に近いレベルで、事業の方向性が一致している |
| らしさの一致 | 自分の生き方の根本が、会社の方向性と一致している |
「目的」は言語化しやすい。ミッション・ビジョンへの共感、事業領域への興味として表現できる。
一方、「らしさ」は言語化が難しい。何をかっこいいと感じるか、どういう振る舞いに心地よさを覚えるか。言葉になる前の「ノリ」「空気感」への親和性。ここにこそ、マッチングの本質がある。
繰り返しになるが、本フレームワークは、この「らしさ」を言語化し、マッチングの精度を上げることを目的とする。以降のセクションでその詳細を明らかにしていく。
2. 学術的背景
本フレームワークの中核は、エドガー・シャインの組織文化3レベルモデルである。
| レベル | 名称 | 内容 |
|---|---|---|
| レベル1 | 文物 | 目に見える構造・制度・ルール |
| レベル2 | 標榜されている価値観 | ミッション・ビジョン・行動指針 |
| レベル3 | 基本想定 | 無意識に当たり前とされている信念・規範 |
一般的なカルチャーフィット議論は主にレベル2を扱う。しかし本質的な「らしさ」はレベル3に該当する。本フレームワークはこのレベル3を言語化することを目指す。
関連する理論として、P-E fit理論(スキルより価値観の一致が定着を左右する)、キャリアアンカー理論(キャリアの自己概念を構成する理論、同じくシャインによる)がある。
3. 10要素モデル
仕事における「楽しさ」は、10の要素に分解できる(詳細は楽しく仕事をするにはを参照)。
| カテゴリ | 要素 | 説明 |
|---|---|---|
| 基盤 | 帰属 | 組織・上司との方向性の一致 |
| 動機源 | 自律 | 自分で決めたいという内発的動機 |
| 承認 | 認められたいという外発的動機 | |
| 対象 | 内容 | 仕事そのものの面白さ |
| 効率係数 | 快適さ | 認知負荷・ストレスの少なさ |
| 協働 | 同僚との横の関係性 | |
| 実績 | 達成 | 目標達成、成功体験 |
| 貢献 | 誰かの役に立っている実感 | |
| 成果 | 成長 | 自分が変化している感覚 |
| 感謝 | 他者から感謝される体験 |
「帰属」は他の9要素とは異なり、全体を方向づける基盤である。帰属がフィットしていないと、他の要素をどれだけ整えても根本的な違和感が残る。
ただし、帰属も他の要素と同様に言語化し、面接質問を設計することができる。本フレームワークでは、10要素すべてについて具体的な言語化と質問設計を行う。特に帰属は基盤であるため、採用プロセスの早い段階で重点的に確認することを推奨する。
4. 「らしさ」とは何か
「何を達成したいか」「何を重視するか」という理性的な選好ではなく、頭で考える前に身体が反応する部分。何をかっこいい/ダサいと感じるか、どういう振る舞いに心地よさ/違和感を覚えるか、言語化される前の「ノリ」「空気感」への親和性。
その核心は「何を良しとするか」より 「それをどうやるか」の作法・流儀 にある。同じ「意見を言うことは良い」という価値観を持つ会社でも、会議で直接言うのか、事前に根回しするのか、後で個別に言うのか。その作法こそが、言語化されていない基本想定である。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 作法・流儀 | 「何をするか」ではなく「どうやるか」 |
| 好き嫌い | 理屈ではない感覚的な選好 |
| 共通言語 | 同じものを見て「わかる」と思える参照点 |
| リズム・テンポ | 仕事の速度感、間の取り方 |
| 距離感 | 人との近さ・遠さの心地よいポイント |
| ユーモアの質 | 何を面白いと感じるか |
| 美意識 | 「雑」「丁寧」の基準 |
これらは一つの軸では測れない。そして、その源泉は仕事以外のところにあることが多い。
第2部:10要素で自社を言語化し、面接質問を設計する
このフレームワークを使う企業の責任
本フレームワークは、候補者を見極めるためのツールである。しかし同時に、企業側にも責任が生じる。
| 責任 | 内容 |
|---|---|
| 言語化する | 「うちの作法」を問う以上、まず自分たちがそれを言語化できていなければならない |
| 体現する | 面接で問う作法を、自分たち自身が日々の仕事で体現している必要がある |
| 伝える | 「うちの作法」は採用プロセスの中で候補者にも伝え、お互いが選び合う関係を作る |
| 受け止める | 「合わない」と判断することは、自分たちの「らしさ」を突きつけられる行為でもある |
このフレームワークを誠実に使う企業は、候補者に対してだけでなく、自分たち自身に対しても誠実であることを求められる。
5. 言語化から質問設計までの流れ
組織の原体験・転機・失敗
↓
6つの枠で言語化
↓
10要素それぞれに適用
↓
面接質問に落とし込む
5.1 ゴール:各要素について何を明確にするか
10要素それぞれについて、以下を明確にすることがゴールである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| うちの作法 | この要素について、うちではどうやっているか |
| なぜそうか(背景) | その作法が生まれた経緯、原体験 |
| 好ましい傾向 | どういう人がうちでは活躍しやすいか |
| 許容範囲 | どこまでのズレなら受け止められるか |
| 面接質問 | 傾向を見極めるための質問 |
5.2 言語化のツール:6つの枠
「らしさ」を言語化するために、以下の枠を補助ツールとして使う。
| 背景(なぜ) | 目的(何を) | 手段(どうやって) | |
|---|---|---|---|
| ポジティブ | ルーツ・原体験 | 大切にしたいこと | 好むスタイル |
| ネガティブ | 傷・反発の原点 | 許せないこと | 避けたいスタイル |
- 背景(なぜ):価値観が形成された経緯。「なぜそう思うのか」の源泉
- 目的(何を):背景から導かれる、大切にしたいこと・許せないこと
- 手段(どうやって):目的を実現するために、好むスタイル・避けるスタイル
特に「背景」が重要である。多くの会社は「目的」と「手段」は言語化できているが、「背景」まで遡れている会社は少ない。「背景」がないと、「目的」「手段」は空虚な言葉になりやすい。また、「ネガティブ」側も重要である。辞める理由、強い違和感、採用の失敗は、ほぼすべて「ネガティブ側の衝突」から生まれる。
6つの枠を埋めるために、以下の問いで組織の経験を振り返る。
| カテゴリ | 問いの例 |
|---|---|
| 組織の原点 | 創業のきっかけ、創業者の原体験、初期メンバーの共通価値観 |
| 転機となった出来事 | 「うちらしい」と感じたプロジェクト、困難を乗り越えた経験 |
| 学びになった失敗 | 「やるべきじゃなかった」案件、辞めた人の理由、「二度とやらない」こと |
| 今に残っているもの | 社内でよく使う言葉、「うちっぽい/うちっぽくない」行動 |
6. 要素別の整理と質問設計
各要素について、定義・会社ごとの違い・整理のための問い・面接質問を整理する。詳細は要素別の詳細と質問設計を参照。
| 要素 | 定義 | 会社による違いの軸 |
|---|---|---|
| 帰属 | 組織・上司との方向性の一致 | ミッションドリブン ↔ プロダクトドリブン ↔ チームドリブン |
| 自律 | 自分で決めて動きたいという内発的動機 | 任せる ↔ 確認を求める |
| 承認 | 認められたいという外発的動機 | 公開で称える ↔ 個別に伝える |
| 内容 | 仕事そのものの面白さ | 課題解決型 ↔ 人との関わり型 |
| 快適さ | 認知負荷・ストレスの少なさ | 効率重視 ↔ 関係性重視 |
| 協働 | 同僚との横の関係性 | 密な連携 ↔ 専門性の尊重 |
| 達成 | 目標達成、成功体験 | 高い目標 ↔ 着実な積み上げ |
| 貢献 | 誰かの役に立っている実感 | 顧客の声重視 ↔ 間接的な貢献 |
| 成長 | 自分が変化している感覚 | 幅を広げる ↔ 深さを追求 |
| 感謝 | 他者から感謝される体験 | 言葉で伝える ↔ 行動で返す |
また、10要素の分解でも掲載したネットワーク図をここでも再掲する

7. 具体例:会社全体での整理
10要素をすべて通して整理した会社の例を示す。
7.1 コーヒーマシンメーカー2社
同じ事業でも「らしさ」はまったく違う。
A社(技術重視)の6つの枠:
| 背景 | 目的 | 手段 | |
|---|---|---|---|
| ポジティブ | 創業者がバリスタ出身。一杯の味に人生を変えられた経験 | 最高の一杯を届ける | 技術への徹底的なこだわり |
| ネガティブ | 「そこそこの味」で妥協して失敗した過去 | 品質の妥協 | 中途半端な製品リリース |
A社の10要素の傾向:
| 要素 | A社の傾向 |
|---|---|
| 帰属 | 「最高の一杯」というミッションへの共感が必須 |
| 自律 | 技術判断は任せる。品質に関わることは相談 |
| 承認 | 技術的な成果を評価。職人的な称え方 |
| 内容 | 技術的なチャレンジに没頭できる人 |
| 快適さ | 開発環境への投資は惜しまない |
| 協働 | 専門性を尊重。干渉しすぎない |
| 達成 | 品質目標に厳しい。妥協しない |
| 貢献 | 「味」という形で顧客に届く |
| 成長 | 技術の深さを追求 |
| 感謝 | 言葉より、良い仕事で返す |
B社(コミュニティ重視)の6つの枠:
| 背景 | 目的 | 手段 | |
|---|---|---|---|
| ポジティブ | 創業者が学生時代、友人とコーヒーを囲んで夜通し語り合った経験 | コーヒーを囲む時間を作る | 温かみのあるデザイン、コミュニティ形成 |
| ネガティブ | 効率化を追求して人の温かみを失った時期 | 人の孤立を助長すること | 効率一辺倒の設計 |
B社の10要素の傾向:
| 要素 | B社の傾向 |
|---|---|
| 帰属 | 「人のつながりを作る」というビジョンへの共感が必須 |
| 自律 | コミュニティに関わることは相談。他は任せる |
| 承認 | みんなで成果を分かち合う |
| 内容 | 人との関わりに喜びを感じる人 |
| 快適さ | 効率より温かみ。多少の非効率は許容 |
| 協働 | 密に連携。声をかけ合う |
| 達成 | 数字より、コミュニティの広がり |
| 貢献 | 「人のつながり」を作っている実感 |
| 成長 | 幅広い経験を積む |
| 感謝 | 言葉にして伝え合う |
7.2 サウスウエスト航空
6つの枠:
| 背景 | 目的 | 手段 | |
|---|---|---|---|
| ポジティブ | 創業者ハーブ・ケレハーの「仕事は楽しくあるべき」という信念 | 社員の幸福 | ユーモア、現場への権限委譲 |
| ネガティブ | 業界の常識だった「社員は交換可能な部品」への反発 | 社員を犠牲にしたコスト削減 | 官僚主義、堅苦しさ |
採用での活用:
サウスウエスト航空は採用基準を「技能より価値観」に置いている。面接では「あなたのユーモアのセンスを教えてください」と聞くことで有名。これは「手段」の層でのフィットを見ている。
6つの枠に合う人を選び、その人たちが「らしさ」を体現し、さらに強化する循環が回っている。
7.3 スターバックス
6つの枠:
| 背景 | 目的 | 手段 | |
|---|---|---|---|
| ポジティブ | ハワード・シュルツがイタリアで見たエスプレッソバーの文化。人々が集い、つながる場所 | 誰もが居場所と感じられる空間 | 一人ひとりに向き合う接客 |
| ネガティブ | 効率を追いすぎて「ただのコーヒーショップ」になりかけた時期 | 人を数字として扱うこと | マニュアル一辺倒の対応 |
採用と評価での活用:
スターバックスは人事評価で「Our Mission and Valuesに基づいてどう行動したか」を振り返る仕組みがある。「らしさ」を維持・強化する装置として機能している。
8. 各要素間でのトレードオフ
8.1 なぜトレードオフが必要か
完璧なマッチングは存在しない
10要素すべてが完璧に一致する候補者は存在しない。存在したとしても、採用競争に勝てるとは限らない。
現実の採用では、「どこが合っていて、どこがズレているか」を把握した上で、「そのズレは許容できるか」を判断することになる。
ポジションによって求めるものが違う
同じ会社でも、ポジションによって重要な要素は異なる。
| ポジション | 重要度が高い傾向 | 重要度が低い傾向 |
|---|---|---|
| エンジニア | 内容、自律、成長 | 承認(人による) |
| 営業 | 達成、承認、協働 | 内容(人による) |
| バックオフィス | 快適さ、協働、貢献 | 達成(人による) |
| マネージャー | 協働、承認、成長 | 内容(チームによる) |
これは傾向であり、会社ごとに異なる。重要なのは、自社のこのポジションでは何が重要かを明確にすることである。
ただし、帰属はどのポジションでも重要度が高い。帰属がミスマッチだと、他の要素が合っていても長期的には定着しにくい。
チーム全体での最適化
採用は個人の評価だけでなく、チーム全体の最適化でもある。
- 既存メンバーと同じ傾向の人を入れるか
- 既存メンバーにない要素を持つ人を入れるか
- チーム全体のバランスを考えるか
これらは意図的に判断すべきである。
8.2 譲れない要素と妥協できる要素
会社全体で譲れない要素
10要素の中で、会社全体として絶対に譲れない要素がある。これは「らしさ」の核心部分であり、ここがズレている人は、どのポジションでも長期的にはミスマッチになる。
見極め方:
- 6つの枠の「背景」に直結している要素
- 過去に、この要素でズレていた人が辞めている
- この要素が合わないと、どの部署でも違和感が出る
例:
- A社では「協働」が譲れない。創業期に一人で抱え込んで失敗した経験があり、「困ったら即相談」が絶対の文化。これが合わない人は、どのポジションでも苦しむ。
- B社では「自律」が譲れない。「自分で考えて動く」ことが全員に求められる。指示待ちの人は、どのポジションでも評価されない。
帰属は多くの会社で譲れない要素になる:
帰属は基盤であり、組織の方向性との一致を意味する。帰属がミスマッチだと、他の要素をどれだけ整えても「なんか違う」という感覚が残りやすい。そのため、帰属は多くの会社で「譲れない要素」に含まれる。
ポジション固有で譲れない要素
会社全体では必須ではないが、このポジションでは譲れない要素がある。
例:
- 営業職では「達成」への動機が必須。目標を追いかけることにストレスを感じる人は厳しい。
- カスタマーサポートでは「感謝」への感度が必須。顧客からの感謝をエネルギーに変えられないと続かない。
- 研究開発職では「内容」への没頭が必須。技術的な面白さに惹かれない人はモチベーションが続かない。
妥協できる要素の見極め方
以下の観点で「妥協できるかどうか」を判断する。
| 観点 | 妥協しやすい | 妥協しにくい |
|---|---|---|
| 入社後に変わりうるか | 経験で変わる部分 | 背景に根ざした部分 |
| 周囲がカバーできるか | チームで補える | 本人にしかできない |
| 業務に直結するか | 間接的な影響 | 直接的な影響 |
| 会社の核心に触れるか | 周辺的な要素 | 「らしさ」の核心 |
8.3 ポジション別の重み付け
重み付けの考え方
10要素に対して、ポジションごとに重み付けを設定する。
| 重み | 意味 |
|---|---|
| ◎ 必須 | このポジションで絶対に必要。ここがズレていたら不採用 |
| ○ 重要 | 活躍に大きく影響する。できれば合っていてほしい |
| △ あれば良い | あると良いが、なくても致命的ではない |
| - 不問 | このポジションでは重視しない |
例:エンジニア / 営業 / バックオフィス
A社(技術重視のスタートアップ)の場合:
| 要素 | エンジニア | 営業 | バックオフィス |
|---|---|---|---|
| 帰属 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 自律 | ◎ | ○ | ○ |
| 承認 | △ | ○ | △ |
| 内容 | ◎ | △ | △ |
| 快適さ | ○ | △ | ◎ |
| 協働 | ○ | ◎ | ◎ |
| 達成 | ○ | ◎ | △ |
| 貢献 | △ | ◎ | ○ |
| 成長 | ◎ | ○ | △ |
| 感謝 | △ | ○ | ○ |
補足:
- 帰属:全ポジションで必須。組織の方向性との一致は全員に求められる。
- エンジニア:自律、内容、成長が必須。技術に没頭でき、自分で考えて動ける人。
- 営業:協働、達成、貢献が必須。チームで動き、目標を追い、顧客に価値を届けることに喜びを感じる人。
- バックオフィス:快適さ、協働が必須。環境を整え、チームを支えることに喜びを感じる人。
これはA社の例であり、会社によって異なる。自社のポジション別重み付けを設計することが重要。
ポジション別プロファイルシート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ポジション名 | |
| 必須の要素(◎) | |
| 重要な要素(○) | |
| あれば良い要素(△) | |
| 不問の要素(-) | |
| このポジション固有の「うちの正解」 | |
| 既存チームの傾向 | |
| 補完したい要素 |
8.4 チーム構成を考慮した補完関係
既存チームの10要素プロファイル
採用を考える前に、既存チームの10要素プロファイルを把握しておく。
把握の方法:
- チームメンバー各自が、10要素について自己評価する
- マネージャーが、各メンバーの傾向を評価する
- チーム全体として、どの要素が強く、どの要素が弱いかを可視化する
可視化の例:
チームA(エンジニア5名)の10要素プロファイル
帰属:●●●●● 全員高い(組織の方向性への共感)
自律:●●●●● 全員高い
承認:●●○○○ ばらつきあり
内容:●●●●● 全員高い
快適:●●●○○ やや高い
協働:●●○○○ ばらつきあり ← 弱み
達成:●●●○○ やや高い
貢献:●○○○○ 低い ← 弱み
成長:●●●●○ 高い
感謝:●○○○○ 低い
補完 vs 同質化
同質化のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| すぐに馴染む | 視点が偏る |
| 衝突が少ない | 弱みが補完されない |
| 文化が強化される | 変化に弱くなる |
補完のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 弱みが補われる | 馴染むのに時間がかかる |
| 視点が広がる | 衝突が起きる可能性 |
| 変化に強くなる | 文化が薄まるリスク |
「らしさ」と「属性」を区別する
本フレームワークが求めるのは**「らしさ(作法・流儀)」の一致であり、「属性(バックグラウンド、性格、経歴)」の一致ではない**。
この区別は、健全な組織を作る上で極めて重要である。
「らしさ」の一致とは:
- 「困ったら即相談する」という作法に共感できるか
- 「自分で考えて動く」というスタイルが自然にできるか
- 「質へのこだわり」という価値観を共有できるか
「属性」の一致ではない:
- 同じ大学出身か
- 同じ業界経験があるか
- 同じ性格タイプか
- 同じ趣味を持っているか
同じ「協働を大切にする」作法でも、それを身につけた背景は多様であっていい。体育会系出身者も、文化系出身者も、海外育ちも、「チームで成し遂げることに喜びを感じる」という構造が同じなら、共鳴する。
同質化の罠を避けるチェック:
- 「うちに合う人」と言うとき、特定の属性(学歴、経歴、性格タイプ)を思い浮かべていないか
- 「なんか違う」と感じたとき、それは「らしさ」のズレか、単に「属性」の違いか
- 採用した人のバックグラウンドが、似通っていないか
「らしさ」を理由に同じ属性の人ばかりを採用しているなら、それは「らしさ」を見ているのではなく、「属性」を見ている可能性がある。属性の多様性は、視点の広がりと変化への強さをもたらす。
異分子を入れる判断
既存チームとあえて異なる人を入れる判断が必要な場合がある。
異分子を入れるべきタイミング:
- チームの弱みが明確で、それを補いたいとき
- チームが同質化しすぎて、視点が偏っているとき
- 組織フェーズが変わり、新しい要素が必要なとき
- 意図的に文化を進化させたいとき
異分子を入れる際の注意点:
- 会社全体で譲れない要素(特に帰属)は、異分子でも合っている必要がある
- マネージャーが、異分子を活かす覚悟があるか
- 既存メンバーが、異分子を受け入れる準備があるか
- 異分子本人が、マイノリティになる覚悟があるか
8.5 トレードオフの判断フレーム
Must / Want / Nice to have
候補者を評価する際、以下の3段階で整理する。
| レベル | 定義 | 扱い |
|---|---|---|
| Must | これがないと不採用 | 1つでも欠けたら見送り |
| Want | できれば満たしてほしい | 総合点で判断 |
| Nice to have | あれば加点 | なくても減点しない |
設定の例:
ポジション:シニアエンジニア
Must(必須)
- 帰属:組織の方向性への共感
- 自律:自分で考えて動ける
- 内容:技術的な面白さに惹かれる
- 協働:チームで働ける(会社全体で必須)
Want(できれば)
- 成長:新しい技術を学び続ける姿勢
- 快適さ:環境改善に自ら取り組む
Nice to have(あれば加点)
- 承認:後輩を称える文化を作れる
- 貢献:顧客視点を持てる
「これがあれば、あれがなくても」の整理
トレードオフの判断をより具体的にするため、以下の形式で整理する。
「〇〇があれば、△△がなくても許容できる」
例:
- 「自律が高ければ、承認欲求が低くても許容できる」
- 「協働が高ければ、達成への欲求が低くても許容できる」
- 「内容への没頭があれば、感謝への感度が低くても許容できる」
「〇〇がなければ、△△があっても採用しない」
例:
- 「帰属が低ければ、どれだけスキルがあっても採用しない」(基盤であるため)
- 「協働が低ければ、どれだけスキルがあっても採用しない」(会社全体で必須のため)
- 「自律が低ければ、どれだけ達成意欲があっても採用しない」(ポジション上必須のため)
判断が分かれるケースの扱い
面接官の間で判断が分かれる場合、以下のプロセスで議論する。
- どの要素で判断が分かれているかを特定する
- その要素は、Must / Want / Nice to have のどれか確認する
- Mustなら、より慎重に判断する。深掘りの追加面接も検討
- Wantなら、他の要素との総合点で判断する
- 判断が分かれた理由を記録しておく(後の検証のため)
8.6 トレードオフ設計シート
会社全体版
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社全体で絶対に譲れない要素 | |
| その理由(背景) | |
| 会社全体で妥協できる要素 | |
| その理由 |
ポジション別版
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ポジション名 | |
| Must(必須) | |
| Want(できれば) | |
| Nice to have(あれば加点) | |
| 「これがあれば、あれがなくても」 | |
| 「これがなければ、あれがあっても不採用」 | |
| 既存チームの傾向 | |
| 今回補完したい要素 |
9. 採用を超えて:10要素の組織運用
本フレームワークは、採用だけでなく、入社後の育成・評価・組織設計にも活用できる。
9.1 評価制度との接続
10要素を評価項目に落とし込む
「うちらしい行動」を評価制度に組み込むことで、採用で見極めた「らしさ」を入社後も維持・強化できる。
設計のアプローチ:
| アプローチ | 内容 | 適する会社 |
|---|---|---|
| 独立項目型 | 10要素を評価項目として独立させる | 文化を明示的に重視する会社 |
| 行動指針統合型 | 既存の行動指針に10要素の視点を組み込む | 既に評価制度がある会社 |
| コンピテンシー型 | 各要素を行動レベルで定義し、レベル評価する | 精緻な評価を求める会社 |
例:独立項目型(協働)
| 評価 | 基準 |
|---|---|
| S | 困っている人を自ら見つけ、チーム全体の協働を促進している |
| A | 困ったら即相談し、他者からの相談にも積極的に応じている |
| B | 促されれば相談するが、自分からは声をかけにくい |
| C | 一人で抱え込む傾向があり、周囲との連携が不十分 |
「うちらしい行動」の評価
10要素それぞれについて、「うちではどういう行動が良いとされるか」を明文化する。
例:A社(協働重視)の場合
| 要素 | うちらしい行動 |
|---|---|
| 帰属 | 組織のミッションを自分の言葉で語れる、方向性に疑問があれば対話する |
| 自律 | 方向性を確認した上で、自分で判断して動く |
| 承認 | 成果を出したメンバーを、チームの場で称える |
| 協働 | 困ったら即相談する。「大丈夫?」と声をかけ合う |
| 成長 | 新しいことに挑戦し、学びをチームに共有する |
注意点:スキル評価との区別
10要素の評価は「らしさ」の評価であり、スキル評価とは区別する。
| 評価軸 | 内容 | 評価方法 |
|---|---|---|
| スキル評価 | 何ができるか | 成果物、実績 |
| らしさ評価 | どう振る舞っているか | 行動観察、360度評価 |
両方が高い人が最も活躍する。どちらかだけでは不十分。
9.2 オンボーディングへの活用
入社時に「うちの作法」を伝える
採用時に見極めた「らしさ」を、入社後に明示的に伝える。
伝えるべき内容:
- 10要素それぞれについて、「うちではどうやっているか」
- なぜそうなっているか(背景)
- 具体的なエピソード
伝え方:
- 入社オリエンテーションで説明する
- メンター/バディから日常の中で伝える
- ドキュメントにまとめて共有する
ギャップの早期発見
入社後1〜3ヶ月で、採用時の判断と実態のギャップを確認する。
確認方法:
- 1on1で、10要素に沿った振り返りをする
- 「入社前のイメージと違ったことはあるか?」と聞く
- マネージャーから見て、予想と違う点を確認する
ギャップが見つかった場合:
- 調整可能な部分か、調整困難な部分かを見極める
- 調整可能なら、具体的なサポートを行う
- 調整困難なら、早めに対話する
調整のサポート
「らしさ」にギャップがある場合でも、調整可能な部分はある。
| 要素 | 調整しやすい部分 | 調整しにくい部分 |
|---|---|---|
| 帰属 | 組織の方向性への理解、上司との関係構築 | 根本的な価値観のズレ |
| 協働 | 相談のタイミング、声のかけ方 | 一人で働きたいという根本的な志向 |
| 自律 | 判断の範囲、報告の仕方 | 指示待ちになりたいという根本的な志向 |
| 達成 | 目標の立て方、進捗の追い方 | 目標に追われること自体へのストレス |
9.3 1on1・フィードバックへの活用
10要素でズレを診断する
メンバーが違和感を感じている場合、10要素で診断する。
診断の問い:
- 「最近、仕事で一番ストレスを感じることは?」→ どの要素に関連するか
- 「逆に、一番楽しいと感じることは?」→ どの要素が満たされているか
- 「入社前と違うと感じることは?」→ どの要素でギャップがあるか
「背景」まで遡った対話
表面的な不満ではなく、「なぜそう感じるか」まで遡る。
例:
メンバー:「もっと任せてほしい」
表面的な対応:「じゃあ、このプロジェクトを任せるね」
背景まで遡る対話:
- 「任せてほしい、というのは具体的にどういうこと?」
- 「今、どこで『任せてもらえていない』と感じている?」
- 「なぜ任せてもらいたいと思うようになった?過去の経験で何かあった?」
→ 「自律」の要素で、本人の背景と会社の作法にギャップがあることが判明
→ 調整可能か、本人の期待を調整すべきか、を判断できる
調整可能な部分と調整困難な部分
1on1を通じて、調整可能な部分と調整困難な部分を見極める。
調整可能な場合:
- 具体的な行動変容の目標を設定する
- 定期的に振り返る
- 成功体験を積ませる
調整困難な場合:
- 正直に伝える:「うちの文化とは合っていないかもしれない」
- 選択肢を示す:部署異動、役割変更、または退職
- 本人の判断を尊重する
9.4 組織全体の10要素プロファイル管理
チームごとの傾向把握
組織が大きくなると、チームごとに10要素の傾向が異なってくる。これを可視化し、管理する。
把握の方法:
- 定期的に、チームごとの10要素プロファイルを更新する
- 全社で比較し、傾向の違いを確認する
- 意図した違いか、意図しない違いかを判断する
可視化の例:
全社の10要素プロファイル比較
| エンジニア | 営業 | バックオフィス | 全社平均 |
帰属 | ●●●●● | ●●●●● | ●●●●● | ●●●●● |
自律 | ●●●●● | ●●●○○ | ●●●○○ | ●●●●○ |
承認 | ●●○○○ | ●●●●○ | ●●●○○ | ●●●○○ |
協働 | ●●●○○ | ●●●●● | ●●●●● | ●●●●○ |
...
偏りの可視化
特定の要素に偏っていないかを確認する。
偏りのリスク:
- 自律が高すぎる:連携不足、サイロ化
- 協働が高すぎる:意思決定の遅れ、責任の曖昧化
- 達成が高すぎる:短期志向、燃え尽き
- 快適さが高すぎる:変化への抵抗、ぬるま湯化
採用計画への反映
組織全体の10要素プロファイルを踏まえて、採用計画を立てる。
検討項目:
- 全社として、どの要素を強化したいか
- 各チームで、どの要素を補完したいか
- 次の採用では、どの要素を重視するか
9.5 「らしさ」の進化と更新
組織フェーズの変化に応じた見直し
組織のフェーズが変わると、求められる「らしさ」も変わる。
| フェーズ | 傾向 |
|---|---|
| 創業期 | 自律、内容が重要。少数精鋭で突破する |
| 成長期 | 協働、達成が重要。チームで成果を出す |
| 成熟期 | 快適さ、貢献が重要。持続可能な運営 |
| 変革期 | 成長、自律が重要。変化に対応する |
注意点:
- 「背景」に根ざした要素は、フェーズが変わっても変えにくい(変えるべきでない)
- 「手段」レベルの作法は、フェーズに応じて調整可能
- 変化させる場合は、意図的に、明示的に行う
- 帰属の核心(組織の方向性)は、フェーズが変わっても一貫性を保つべき
定期的な振り返りサイクル
「らしさ」の言語化は一度やって終わりではない。定期的に振り返り、更新する。
推奨サイクル:
- 四半期:10要素の「うちの正解」が実態と合っているか確認
- 半年:採用判断と入社後の実態を照合
- 年次:6つの枠から振り返り、「背景」に変化がないか確認
振り返りの問い:
- 最近の採用で、想定と違った人はいたか?何がズレていたか?
- 最近辞めた人は、どの要素でズレがあったか?
- 最近「うちらしい」と感じた出来事は?「うちらしくない」と感じた出来事は?
異分子投入のタイミング
組織の「らしさ」を意図的に進化させたい場合、異分子を投入する選択肢がある。
検討すべきタイミング:
- 同質化が進みすぎて、新しい視点が必要なとき
- 組織フェーズが変わり、新しい要素が求められるとき
- 特定の弱みを補完したいとき
異分子投入の設計:
- どの要素で異分子を入れるかを明確にする
- 会社全体で譲れない要素(特に帰属)は、異分子でも必須とする
- 受け入れ側の準備をする(マネージャー、チーム)
- 異分子本人にも、マイノリティになることを伝える
- 定期的にフォローし、調整をサポートする
第3部:採用プロセス設計
10. 全体像
10.1 フェーズの構成
フェーズ0:企業側の準備(採用前)
↓
フェーズ1:レベル1の確認(条件・制度)
↓
フェーズ2:レベル2の確認(能力・標榜された価値観)
↓
フェーズ3:レベル3の確認(基本想定=らしさ)
↓
フェーズ4:総合判断
↓
フェーズ5:入社後の検証(オプション)
10.2 各フェーズの目的
| フェーズ | 目的 | 主な確認内容 |
|---|---|---|
| 0 | 自社の「らしさ」を言語化する | 10要素の整理、面接質問、判定基準 |
| 1 | 条件面でのミスマッチを早期に発見 | 給与、勤務地、勤務形態 |
| 2 | 能力・スキルの確認 | 職務経歴、実績、標榜された価値観への共感 |
| 3 | 本質的なマッチングの確認 | 基本想定、作法・流儀、背景の共鳴 |
| 4 | 総合的な判断 | 各フェーズの結果を統合 |
| 5 | フレームワークの精度向上 | 採用判断と入社後の実態を照合 |
11. フェーズ0:企業側の準備(採用前)
11.1 10要素の整理
第2部で示した方法に従い、10要素それぞれについて以下を明確にする。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| うちの作法 | この要素について、うちではどうやっているか |
| なぜそうか(背景) | その作法が生まれた経緯、原体験 |
| 好ましい傾向 | どういう人がうちでは活躍しやすいか |
| 許容範囲 | どこまでのズレなら受け止められるか |
11.2 面接質問の選定
10要素それぞれについて、以下の3種類の質問を用意する。
| 種類 | 目的 |
|---|---|
| 適応力を見る質問 | その要素に関する汎用的な対応力 |
| 曖昧な状況質問 | うちの作法とのフィット |
| 背景を引き出す質問 | 原体験の共鳴 |
すべての質問を毎回聞く必要はない。時間に応じて選定する(組み合わせ例は付録Bを参照)。
11.3 採点シートの設計
二層構造
| 層 | 内容 | 見ているもの |
|---|---|---|
| ベース層 | 文化への適応力。汎用的な「馴染む力」 | 適応力を見る質問 |
| 加点層 | 会社固有のフィット。10要素での一致 | 曖昧な状況質問、背景を引き出す質問 |
配点の決定
| 項目 | 配点例 | 内容 |
|---|---|---|
| レベル1 | Pass/Fail | 条件の一致 |
| レベル2 | 30点 | スキル・能力・標榜された価値観 |
| レベル3-a(ベース層) | 20点 | 基本的な適応力 |
| レベル3-b(加点層) | 30点 | 会社固有の作法へのフィット |
| Overall | 20点 | 言語化できない「好み」 |
会社の方針に応じて配点を調整する。
- 文化重視 → レベル3-bとOverallを高く
- スキル重視 → レベル2を高く
- 異分子歓迎 → レベル2とOverallを高く、レベル3-bを低く
Overall枠の扱い
「なんか好き」「同じ匂いがする」という言語化できない判断を、公式に認める枠。
メリット:
- 隠れて影響するより、オープンに存在させた方が健全
- 責任の所在が明確になる
- 後から検証もできる
リスク:
- 同質性バイアスになりうる
- 無意識の差別につながる可能性
対処:
- Overall枠の配分を明確にする
- 複数人で判断する
- 定期的に振り返り、パターンを分析する
11.4 面接官の目線合わせ
採用に関わる全員で、以下を共有する。
- 10要素の「うちの作法」と判定基準
- 曖昧な状況質問と「うちの正解」
- 採点シートの使い方
目線が揃っていないと、面接官によって判断がバラバラになる。
12. フェーズ1-2:条件・能力の確認
12.1 フェーズ1:レベル1の確認
目に見える条件・制度の確認。
- 勤務地
- 給与・報酬
- 勤務形態
- 勤務時間
レベル1が合わない場合、他がどれだけ合っていても成立しない。早期に確認する。
12.2 フェーズ2:レベル2の確認
能力・スキルの確認
- 職務経歴
- 実績
- スキルセット
標榜された価値観の確認
- ミッション・ビジョンへの共感
- 事業領域への興味
- なぜこの会社か
見るべきポイント:
- 表面的な共感ではなく、自分の言葉で語れるか
- なぜ共感するのか、背景があるか
13. フェーズ3:レベル3の確認(らしさ)
本フレームワークの核心部分。
13.1 帰属の重点確認
帰属は基盤であり、他の要素を方向づける。フェーズ3の早い段階で重点的に確認する。
確認のポイント:
- 組織の方向性と本人の価値観が重なっているか
- 「なぜこの会社か」に深い背景があるか
- ミスマッチの兆候がないか
帰属がフィットしていないと判断した場合、他の要素の確認に進んでも意味が薄い。早期に見極めることで、お互いの時間を節約できる。
13.2 ステップ3-1:基本的な適応力
10要素について、「適応力を見る質問」を投げる。
見るべきポイント:
- 答えの内容より、答え方
- 具体的なエピソードが出てくるか
- 自然に語れるか、作った感じがないか
13.3 ステップ3-2:会社独自の作法へのフィット
10要素について、「曖昧な状況質問」を投げる。
実施方法:
- 状況質問を投げる
- 回答を聞く(急かさない)
- 「なぜそう思いますか?」と深掘りする
- 「うちの正解」と比較する
判定のポイント:
- 答えが「うちの正解」と一致しているか
- 一致していなくても、許容範囲内か
- 深掘りしたときに、納得できる背景があるか
13.4 ステップ3-3:背景の共鳴
10要素について、「背景を引き出す質問」を投げる。
見るべきポイント:
- 語られる原体験が、会社のルーツと共鳴するか
- 大切にしていることが、会社の目的と重なるか
- 直感的に「この人とは話が合いそう」と感じるか
候補者が背景を言語化できていない場合の引き出し方:
「なぜ」を3回繰り返す
- 「なぜそう思いますか?」
- 「それはなぜですか?」
- 「その根っこには何がありますか?」
具体的なエピソードを先に聞く
- 「最近、仕事で嬉しかったことは?」→「それの何が嬉しかったですか?」
対比を使う
- 「逆に、嫌だったことは?」→「それと今の話、何が違いますか?」
沈黙を恐れない
- 深い問いには時間がかかる。待つ。
「具体」ではなく「構造」で見る:
背景の共鳴は、エピソードの「具体」ではなく、その奥にある「構造」で見る。
「パンクが好き」という具体ではなく、「既存の枠を壊して自分で作ることに惹かれる」という構造を見る。具体が違っても構造が同じなら共鳴する。具体が同じでも構造が違えば共鳴しない。
13.5 ステップ3-4:共通言語の確認
影響を受けた人物を聞く
- 「仕事をする上で憧れる人物は?」
- 「その人のどこに惹かれますか?」
好きなことを語ってもらう
- 「何について語り始めると止まらなくなりますか?」
- 語り方、目の輝きを観察する
14. フェーズ4:総合判断
14.1 採点シートの記入
各フェーズの結果を採点シートに記入する。
| 項目 | 配点 | 得点 | コメント |
|---|---|---|---|
| レベル1(条件) | Pass/Fail | ||
| レベル2(能力・価値観) | |||
| レベル3-a(適応力) | |||
| レベル3-b(フィット) | |||
| Overall(直感) | |||
| 合計 |
14.2 合議の進め方
複数の面接官がいる場合、以下の流れで合議する。
- 各自が採点シートを記入
- 点数を共有する前に、印象を言葉で共有
- 点数を開示
- 大きくズレている項目について議論
- 最終判断
14.3 判断が分かれるケースの扱い
レベル2は高いがレベル3が低い
スキルはあるが、文化に合わない可能性。短期的には成果を出すが、長期的には摩擦が生じる可能性。
レベル3は高いがレベル2が低い
文化には合うが、スキルに不安。入社後の育成で補えるか、即戦力が必要かを検討。
Overallだけが高い/低い
言語化できない直感。無視せず、何が引っかかるかを言語化してみる。
14.4 欠点と強みのセット
完璧な人はいない。欠点と強みを「セット」で見る。
欠点が許容されるケース
| 欠点 | 許容される会社 | 許容されない会社 |
|---|---|---|
| おっちょこちょい | ミスをカバーし合う文化 | ミスに厳しい文化 |
| 口下手 | 職人気質を尊重する会社 | コミュニケーション重視の会社 |
| 空気読めない | 直接的な議論を好む会社 | 根回し文化の会社 |
「受け止められるか」という問い
「この人の欠点を、うちは受け止められるか?」
受け止められる会社では、欠点が欠点として機能しない。むしろ愛嬌になったり、周囲が自然とカバーしたりする。
15. フェーズ5:入社後の検証(オプション)
15.1 追跡項目
採用時の判定と、入社後の実態を照合する。
| 項目 | 採用時の判定 | 入社後の実態 |
|---|---|---|
| レベル3-aの各要素 | ||
| レベル3-bの各要素 | ||
| Overall | ||
| 活躍度 | - | (6ヶ月後に記入) |
| 定着 | - | (1年後に記入) |
15.2 検証のタイミング
| タイミング | 確認内容 |
|---|---|
| 入社1ヶ月 | 初期の適応状況 |
| 入社3ヶ月 | 試用期間終了時点での評価 |
| 入社6ヶ月 | 本格的な活躍状況 |
| 入社1年 | 定着・活躍の総合評価 |
15.3 フレームワークの精度向上
検証結果を蓄積し、以下を改善する。
- 判定基準の見直し
- 質問の改善
- 「うちの正解」の更新
付録
A. ワークシート集
A.1 振り返りワークシート
| カテゴリ | 問い | 回答 |
|---|---|---|
| 原点 | 創業のきっかけ | |
| 創業者の原体験 | ||
| 初期メンバーの共通価値観 | ||
| 転機 | 「うちらしい」プロジェクト | |
| 困難を乗り越えた経験 | ||
| 失敗 | 「やるべきじゃなかった」案件 | |
| 辞めた人の理由 | ||
| 今 | よく使われる言葉 | |
| 「うちっぽい」行動 | ||
| 「うちっぽくない」行動 |
A.2 10要素整理シート
| 要素 | うちの作法 | なぜそうか(背景) | 好ましい傾向 | 許容範囲 |
|---|---|---|---|---|
| 帰属 | ||||
| 自律 | ||||
| 承認 | ||||
| 内容 | ||||
| 快適さ | ||||
| 協働 | ||||
| 達成 | ||||
| 貢献 | ||||
| 成長 | ||||
| 感謝 |
A.3 採用判定シート
| 項目 | 配点 | 得点 | コメント |
|---|---|---|---|
| レベル1(条件) | Pass/Fail | ||
| レベル2(能力・価値観) | |||
| レベル3-a(適応力) | |||
| レベル3-b(フィット) | |||
| Overall(直感) | |||
| 合計 |
A.4 トレードオフ設計シート(会社全体版)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社全体で絶対に譲れない要素 | |
| その理由(背景) | |
| 会社全体で妥協できる要素 | |
| その理由 | |
| 「これがあれば、あれがなくても」 | |
| 「これがなければ、あれがあっても不採用」 |
A.5 ポジション別プロファイルシート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ポジション名 | |
| 必須の要素(Must) | |
| 重要な要素(Want) | |
| あれば良い要素(Nice to have) | |
| 不問の要素 | |
| このポジション固有の「うちの正解」 | |
| 既存チームの傾向 | |
| 今回補完したい要素 |
A.6 チーム10要素プロファイルシート
| 要素 | メンバー1 | メンバー2 | メンバー3 | メンバー4 | チーム傾向 | 補完が必要か |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 帰属 | ||||||
| 自律 | ||||||
| 承認 | ||||||
| 内容 | ||||||
| 快適さ | ||||||
| 協働 | ||||||
| 達成 | ||||||
| 貢献 | ||||||
| 成長 | ||||||
| 感謝 |
B. 質問の組み合わせ例
B.1 30分面接の場合
時間が限られるため、最も重要な要素に絞る。
-
導入(5分)
- 自己紹介、アイスブレイク
-
レベル2の確認(10分)
- 経歴の確認
- なぜこの会社か
-
レベル3の確認(12分)
- 帰属について、曖昧な状況質問を1つ(基盤のため必須)
- 最重要の要素について、曖昧な状況質問を1つ
- 背景を引き出す質問を1つ
-
クロージング(3分)
- 質問を受ける
B.2 60分面接の場合
-
導入(5分)
-
レベル2の確認(15分)
- 経歴の確認
- なぜこの会社か
- 深掘り
-
レベル3の確認(35分)
- 帰属について重点的に確認(10分)
- 適応力を見る質問を2〜3要素
- 曖昧な状況質問を2〜3要素
- 背景を引き出す質問を2〜3要素
-
クロージング(5分)
B.3 複数回面接の場合
1次面接(現場担当者)
- レベル2の確認
- レベル3-a(適応力)の確認
- 帰属の初期確認
2次面接(マネージャー)
- レベル3-b(フィット)の確認
- 曖昧な状況質問を中心に
- 帰属の深掘り
最終面接(経営層)
- 背景の共鳴の確認
- 帰属の最終確認(組織の方向性との一致)
- Overall判断
C. 用語集
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| 6つの枠 | 「らしさ」を言語化するためのツール。背景/目的/手段 × ポジティブ/ネガティブ |
| 10要素 | 仕事の楽しさを構成する10の要素(帰属、自律、承認、内容、快適さ、協働、達成、貢献、成長、感謝) |
| レベル3 | シャインの組織文化モデルにおける「基本想定」。無意識に当たり前とされている信念・規範 |
| ベース層 | 文化への適応力。汎用的な「馴染む力」 |
| 加点層 | 会社固有のフィット。10要素での一致 |
| Overall | 言語化できない「好み」を扱う枠 |
| 曖昧な状況質問 | どちらの答えも正しいが、会社には「うちの正解」がある質問 |
| 背景の共鳴 | 個人と会社の原体験・ルーツが響き合っている状態 |
D. よくある質問(FAQ)
Q: このフレームワークは、どの規模の会社でも使えますか?
A: 基本的には使える。小規模な会社では経営者の「らしさ」がそのまま会社の「らしさ」になりやすい。大規模な会社では、部署単位で言語化する必要がある場合もある。
Q: 完璧なマッチングは可能ですか?
A: 不可能。すべてが一致する人は存在しない。重要なのは、「どこが合っていれば満足できるか」「どこは妥協できるか」を知ることである。第8章のトレードオフ設計を参照。
Q: このプロセスは時間がかかりすぎませんか?
A: フェーズ0(準備)には時間がかかる。しかし一度言語化してしまえば、面接の精度が上がり、入社後のミスマッチが減る。長期的にはペイする。
Q: 曖昧な状況質問に対して、候補者が「うちの正解」を見抜いて回答した場合はどうしますか?
A: 深掘りする。「なぜそう思いますか?」と聞く。本当にそう思っている人は、背景や具体例が出てくる。取り繕っている人は、深掘りすると曖昧になる。
Q: 経営層と現場で「うちらしさ」の認識がズレている場合、どうすればいいですか?
A: まずそのズレを可視化する。両者を集めてワークショップを行い、認識の違いを議論する。
Q: ポジションによって求める要素が違う場合、どう整理すればいいですか?
A: 会社全体で「絶対に譲れない要素」(特に帰属)と、ポジション固有で「必要な要素」を分けて整理する。第8章のトレードオフ設計シートを使って、Must / Want / Nice to have を明確にする。
Q: 採用以外にも使えますか?
A: 使える。評価制度への組み込み、オンボーディング、1on1、組織全体のプロファイル管理など、入社後の運用にも活用できる。第9章を参照。
Q: 組織のフェーズが変わったら、10要素の整理も変えるべきですか?
A: 「背景」に根ざした要素は変えにくい(変えるべきでない)。「手段」レベルの作法は、フェーズに応じて調整可能。定期的に振り返り、意図的に更新する。
Q: 帰属は他の要素と同じように扱っていいのですか?
A: 帰属も他の要素と同じフレームワークで言語化・質問設計できる。ただし、帰属は基盤であり、他の要素を方向づける特別な位置にある。そのため、採用プロセスでは早い段階で重点的に確認し、帰属がミスマッチの場合は早めに見極めることを推奨する。
E. 最小実践ルート
E.1 スタートアップ向け:まずこれだけやる
所要時間:約2時間
-
振り返りワークシート(A.1)を埋める(30分)
- 創業のきっかけ、原体験、失敗
-
10要素の中から、最も「うちらしさ」が出る3〜4要素を選ぶ(15分)
- 帰属は必ず含める(基盤のため)
-
選んだ要素について、10要素整理シート(A.2)を埋める(45分)
- うちの作法、なぜそうか、好ましい傾向、許容範囲
-
曖昧な状況質問を3〜4つ作る(30分)
- 各要素について1つずつ
- 「うちの正解」を明確にする
-
次の採用面接で試す
E.2 既存組織向け:まずこれだけやる
所要時間:約3時間
-
採用に関わる人を集めて、「うちっぽい」「うちっぽくない」を挙げる(60分)
-
出てきたものを10要素に分類する(30分)
-
最も重要な3〜4要素について、整理シートを埋める(60分)
- 帰属は必ず含める
-
曖昧な状況質問を3〜4つ作り、「うちの正解」を合意する(30分)
-
次の採用面接で、面接官全員で事前共有する
E.3 入社後・評価への展開:次のステップ
採用での運用が安定したら、入社後の運用に展開する。
ステップ1:オンボーディングへの組み込み
- 入社時に「うちの作法」を明示的に伝える
- 10要素の整理シートを、新入社員向けの資料に含める
ステップ2:1on1での活用
- 違和感が出たとき、10要素で診断する
- 「どの要素でズレているか」を特定し、調整をサポートする
ステップ3:評価制度への組み込み
- 10要素から、評価項目に落とし込む
- 「うちらしい行動」を定義し、評価基準に入れる
ステップ4:組織全体のプロファイル管理
- チームごとの10要素プロファイルを可視化する
- 採用計画に反映する
要素別の詳細と質問設計
各要素について、以下の構成で整理する。
- 要素の定義
- 会社ごとの違いの例
- 整理のための問い
- 面接質問の設計(適応力を見る質問、曖昧な状況質問、背景を引き出す質問)
帰属(Belonging / Fit)
定義
組織のミッション・価値観との合致、および評価者(上司)との方向性の一致。「何のために働くか」「誰に認められたいか」が自分と合っているという感覚。他の9要素を方向づける基盤。
会社ごとの違いの例
A社:ミッションドリブン型
- 背景:創業者が社会課題に直面した原体験
- 目的:この問題を解決したい
- 手段:問題解決に共感する人を集める
B社:プロダクトドリブン型
- 背景:創業者が「こういうものがあったらいいのに」と思った経験
- 目的:良いものを作りたい
- 手段:ものづくりへのこだわりを共有できる人を集める
C社:チームドリブン型
- 背景:創業メンバーが「この仲間と何かやりたい」から始まった
- 目的:この仲間で面白いことをしたい
- 手段:カルチャーフィットを最重視する
整理のための問い
- うちの組織が目指している方向性は何か?
- 創業者/リーダーの原体験は何か?
- 「この方向性なら付いていきたい」と感じる人はどんな人か?
- 過去に「方向性が合わなかった」人は、何がズレていたか?
- うちで「活躍している人」と「苦しんでいる人」の違いは何か?
面接質問の設計
適応力を見る質問
- 「これまでの仕事で、組織の方向性と自分の価値観が合っていると感じた経験はありますか?」
- 「逆に、合っていないと感じた経験は?そのときどうしましたか?」
- 見るポイント:方向性のフィットを意識しているか、ミスマッチにどう対処するか。
曖昧な状況質問
- 「会社の方針と自分のやりたいことが少しズレていると感じたとき、どうしますか?」
- ミッションドリブン型の正解:会社の方針の意図を理解しようとする、対話で擦り合わせる
- 個人裁量重視型の正解:自分のやり方で成果を出す方法を探す
- 「入社後、思っていた仕事と違うと感じたらどうしますか?」
背景を引き出す質問
- 「仕事において、何を一番大切にしていますか?なぜそう思うようになったのですか?」
- 「どんな会社・チームで働きたいですか?その理想像はどこから来ていますか?」
- 「これまでで最も『この会社/チームにいてよかった』と思った瞬間は?逆に『ここは違う』と思った瞬間は?」
- 「うちの〇〇(ミッション/ビジョン/事業)について、どう感じましたか?」
自律
定義
自分で決めて動きたいという内発的動機。裁量を与えられることへの反応。
会社ごとの違いの例
A社:自律重視
- 背景:創業者が「指示待ちの組織は死ぬ」という信念を持つ
- 目的:各自が自分で考えて動く組織
- 手段:方向性だけ共有し、やり方は任せる
B社:確認重視
- 背景:過去に独断で大きな失敗をした経験
- 目的:確実に進める、リスクを最小化する
- 手段:こまめに確認しながら進める
どちらも「自律」を重視していると言えるが、中身がまったく違う。
整理のための問い
- うちでは、どこまで自分で決めていいか?
- 相談なしで動いて良い範囲はどこまでか?
- 「勝手にやりすぎ」と「相談しすぎ」、どちらが問題になりやすいか?
- なぜそのバランスになっているか(背景)?
面接質問の設計
適応力を見る質問
- 「裁量を与えられたとき、どう動きますか?」
- 「『好きにやっていいよ』と言われたら、どう感じますか?」
- 見るポイント:ワクワクするか、不安になるか。具体的な行動が想像できているか。
曖昧な状況質問
- 「上司から『好きにやっていいよ』と言われました。まず何をしますか?」
- A社の正解:とりあえず動いてみて、後で共有する
- B社の正解:まず方向性を確認してから動く
- 「判断に迷うことがあったとき、どうしますか?」
- A社の正解:自分で決めて進む、後で報告
- B社の正解:まず相談する
背景を引き出す質問
- 「自分で決めて動いた経験で、印象に残っているものは?」
- 「逆に、もっと相談すればよかったと思った経験は?」
- 「なぜ自分で決めたい(または確認したい)と思うようになったのですか?」
承認
定義
認められたいという外発的動機。フィードバックへの欲求。
会社ごとの違いの例
A社:公開で称える
- 背景:チームで成果を分かち合う文化を重視
- 目的:成功を全員で祝う
- 手段:全社会議で表彰、Slackで公開称賛
B社:個別に伝える
- 背景:派手なことを好まない職人気質
- 目的:本人にしっかり伝わればいい
- 手段:1on1で丁寧にフィードバック
整理のための問い
- うちでは、どうやって「よくやった」を伝えているか?
- 公開で称えるか、個別に伝えるか?
- 頻繁にフィードバックするか、節目でまとめてか?
- なぜそのやり方になっているか(背景)?
面接質問の設計
適応力を見る質問
- 「どういうとき『認められた』と感じますか?」
- 「フィードバックがないと不安になりますか?」
- 見るポイント:承認欲求の強さ、どういう形の承認を求めるか。
曖昧な状況質問
- 「良い成果を出したとき、どう扱われたいですか?」
- A社の正解:みんなの前で称えてほしい
- B社の正解:本人にしっかり伝えてもらえれば十分
- 「上司からのフィードバックが少ないと感じたら、どうしますか?」
背景を引き出す質問
- 「これまでで、最も『認められた』と感じた経験は?」
- 「逆に、認めてもらえなくて辛かった経験は?」
- 「なぜその形の承認を求めるようになったのですか?」
内容
定義
仕事そのものの面白さ。何に興味を持ち、何に没頭できるか。
会社ごとの違いの例
A社:課題解決型
- 背景:複雑な問題を解くことに喜びを感じる人が集まった
- 目的:難しい問題に挑む
- 手段:技術的なチャレンジを重視
B社:人との関わり型
- 背景:顧客との対話から価値を生む経験
- 目的:人の役に立つ実感
- 手段:顧客接点を重視
整理のための問い
- うちの仕事の面白さはどこにあるか?
- 何に没頭できる人が活躍しているか?
- 「これは面白くない」と感じる仕事は何か?
- なぜそれが面白いのか(背景)?
面接質問の設計
適応力を見る質問
- 「仕事の面白さをどこに見出しますか?」
- 「時間を忘れて没頭した仕事は何ですか?」
- 見るポイント:何に興味を持つか、没頭のトリガーは何か。
曖昧な状況質問
- 「技術的に難しいが顧客へのインパクトは小さい仕事と、技術的には簡単だが顧客へのインパクトが大きい仕事、どちらをやりたいですか?」
- 「ルーティンワークが続くとき、どう感じますか?」
背景を引き出す質問
- 「仕事以外で、夢中になっていることはありますか?」
- 「子供の頃、何に没頭していましたか?」
- 「なぜそれに惹かれるのだと思いますか?」
快適さ
定義
認知負荷・ストレスの少なさ。ツール、プロセス、環境への反応。
会社ごとの違いの例
A社:効率重視
- 背景:非効率なプロセスで苦しんだ経験
- 目的:ストレスなく仕事に集中できる環境
- 手段:ツールへの投資、プロセスの継続的改善
B社:多少の非効率は許容
- 背景:人の温かみを優先してきた
- 目的:効率より関係性
- 手段:対面でのコミュニケーションを重視
整理のための問い
- うちの環境で、何がストレスになりやすいか?
- 効率化にどの程度投資しているか?
- 非効率を許容する場面はあるか?
- なぜそのバランスになっているか(背景)?
面接質問の設計
適応力を見る質問
- 「非効率なプロセスに出会ったとき、どうしますか?」
- 「どういう環境だと集中できますか?」
- 見るポイント:非効率への耐性、環境への要求水準。
曖昧な状況質問
- 「明らかに非効率なプロセスがあるが、変えると一部の人が困る。どうしますか?」
- A社の正解:効率化を提案する
- B社の正解:関係者と相談しながら慎重に進める
- 「ツールが古くて使いにくい場合、どうしますか?」
背景を引き出す質問
- 「これまでの職場で、最もストレスだったことは?」
- 「逆に、最も働きやすかった環境は?」
- 「なぜそれがストレス(または快適)だったのですか?」
協働
定義
同僚との横の関係性。チームで働くことへの姿勢。
会社ごとの違いの例
A社:密な連携
- 背景:創業期に一人で抱え込んで失敗した経験
- 目的:一人で抱え込まない
- 手段:困ったら即相談、「大丈夫?」と声をかけ合う
B社:専門性の尊重
- 背景:職人集団としての誇り
- 目的:各自の領域を尊重する
- 手段:依頼は明確に、相手の領域には踏み込まない
整理のための問い
- うちでは、チームでどう動いているか?
- 困ったときの相談の仕方は?
- 「干渉しすぎ」と「放置しすぎ」、どちらが問題になりやすいか?
- なぜそのやり方になっているか(背景)?
面接質問の設計
適応力を見る質問
- 「チームで働くことについて、どう感じますか?」
- 「困ったとき、すぐ相談しますか?まず自分で考えますか?」
- 見るポイント:チームワークへの姿勢、相談のハードル。
曖昧な状況質問
- 「チームメンバーが明らかに困っているが、本人は『大丈夫』と言っている。どうしますか?」
- A社の正解:声をかけて一緒に考える
- B社の正解:本人が言うなら任せる
- 「自分の担当外の仕事で、手伝えそうなことがある。どうしますか?」
背景を引き出す質問
- 「チームで成し遂げた経験で、印象に残っているものは?」
- 「逆に、チームでうまくいかなかった経験は?」
- 「なぜチームで働くことが好き(または苦手)なのですか?」
達成
定義
目標達成、成功体験。ゴールに向かうことへの動機。
会社ごとの違いの例
A社:高い目標を追う
- 背景:競争環境で勝ち抜いてきた経験
- 目的:ストレッチした目標に挑む
- 手段:野心的なKPI、達成へのプレッシャー
B社:着実に積み上げる
- 背景:地道な努力が実を結んだ経験
- 目的:確実に前進する
- 手段:現実的な目標、小さな成功の積み重ね
整理のための問い
- うちでは、目標をどう設定しているか?
- 達成へのプレッシャーはどの程度か?
- 未達のときのカルチャーは?
- なぜそのバランスになっているか(背景)?
面接質問の設計
適応力を見る質問
- 「目標を追いかけることに、モチベーションを感じますか?」
- 「達成感がないと続けられないタイプですか?」
- 見るポイント:目標への動機づけ、未達への耐性。
曖昧な状況質問
- 「かなり高い目標を設定されました。どう感じますか?」
- A社の正解:燃える、やってやろうと思う
- B社の正解:現実的な計画を立てたい
- 「目標未達が続いているとき、どうしますか?」
背景を引き出す質問
- 「これまでで、最も『やった』と感じた達成経験は?」
- 「逆に、達成できなくて悔しかった経験は?」
- 「なぜ目標を追いかけることが好き(または苦手)なのですか?」
貢献
定義
誰かの役に立っている実感。インパクトの可視化。
会社ごとの違いの例
A社:顧客の声を重視
- 背景:顧客からの感謝で救われた経験
- 目的:誰のためにやっているかを常に意識
- 手段:顧客の声を全社に共有、顧客訪問を推奨
B社:間接的な貢献
- 背景:裏方の仕事で組織を支えてきた
- 目的:直接見えなくても価値がある
- 手段:数字での貢献を可視化
整理のための問い
- うちでは、「誰の役に立っているか」をどう実感できるようにしているか?
- 顧客との接点はどの程度あるか?
- 間接部門の貢献をどう評価しているか?
- なぜそのやり方になっているか(背景)?
面接質問の設計
適応力を見る質問
- 「『誰かの役に立っている』実感をどの程度求めますか?」
- 「自分の仕事のインパクトが見えないと、モチベーションが下がりますか?」
- 見るポイント:貢献実感への欲求、間接的な貢献への耐性。
曖昧な状況質問
- 「顧客の声が直接届かない仕事が続くとき、どう感じますか?」
- 「自分の仕事が誰の役に立っているかわからないとき、どうしますか?」
背景を引き出す質問
- 「これまでで、最も『役に立てた』と感じた経験は?」
- 「なぜ人の役に立つことが大切だと思うのですか?」
- 「誰に対して貢献したいと思いますか?」
成長
定義
自分が変化している感覚。スキル、視野、役割の拡大。
会社ごとの違いの例
A社:変化を求める
- 背景:「変化し続けることでしか生き残れない」という信念
- 目的:常に新しいことに挑戦する
- 手段:3年で役割を変える、新規プロジェクトへの異動を推奨
B社:深さを求める
- 背景:職人の家庭で育ち、10年かけて技を磨く姿を見てきた
- 目的:一つのことを深める
- 手段:同じ領域で長く経験を積む、専門性を評価する
整理のための問い
- うちでは、「成長」をどう定義しているか?
- 幅を広げることと、深さを追求すること、どちらを重視しているか?
- 同じ仕事を続けることをどう評価しているか?
- なぜそのやり方になっているか(背景)?
面接質問の設計
適応力を見る質問
- 「成長への欲求は強い方ですか?」
- 「どういう成長を求めますか?(スキル、視野、役割など)」
- 見るポイント:成長欲求の強さ、どういう成長を志向するか。
曖昧な状況質問
- 「同じ仕事を3年続けています。どう感じますか?」
- A社の正解:新しい挑戦を求めたい
- B社の正解:深めていくことに価値がある
- 「専門性を深めるか、幅を広げるか、どちらを選びますか?」
背景を引き出す質問
- 「これまでで、最も『成長した』と感じた経験は?」
- 「その成長のきっかけは何でしたか?」
- 「なぜその方向の成長を求めるのですか?」
感謝
定義
他者から感謝される体験。感謝の表現の仕方。
会社ごとの違いの例
A社:言葉で伝える
- 背景:「ありがとう」を言い合う文化で育ったメンバーが多い
- 目的:感謝は言葉にして伝える
- 手段:その場ですぐ伝える、照れずに言う
B社:行動で返す
- 背景:言葉より行動で示す職人文化
- 目的:感謝は行動で返す
- 手段:次に相手が困ったとき、助けることで返す
整理のための問い
- うちでは、感謝をどう表現しているか?
- 言葉で伝えるか、行動で返すか?
- 感謝を伝えることの頻度は?
- なぜそのやり方になっているか(背景)?
面接質問の設計
適応力を見る質問
- 「感謝を言葉にして伝えるタイプですか?」
- 「感謝されないと、モチベーションが下がりますか?」
- 見るポイント:感謝の表現スタイル、感謝への欲求。
曖昧な状況質問
- 「誰かに助けてもらったとき、どう返しますか?」
- A社の正解:その場で言葉にして伝える
- B社の正解:次に相手が困ったとき行動で返す
- 「感謝を伝えたいが、相手が照れ屋で受け取りにくそう。どうしますか?」
背景を引き出す質問
- 「感謝されて嬉しかった経験は?」
- 「感謝を伝えて、相手が喜んでくれた経験は?」
- 「なぜその形で感謝を表現するようになったのですか?」
本ドキュメントは、採用における本質的なマッチングを実現するための思考の補助線である。唯一の正解ではなく、各企業が自分の文脈に合わせてカスタマイズすることを前提としている。