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楽しく仕事をするには

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Me
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絶賛転職活動をしています。
そうなると、自分がどうしたいかがすごく大事。

今回はちょっと大きなきっかけがあって、自分の今後のキャリア・やりたいこと・人生観についてかなり深く考えました。
ある意味では数ヶ月以上、むしろ社会に出てからって考えると20年以上考えてたテーマなのかもしれない。
いろんな紆余曲折を経てようやく自分の中で答えが見つかりました。

自分は何をしたいのか。それは、

楽しく働く

です。

はい?って感じかもしれんが、

「楽しく働きながら、働くのを楽しくするものを作る」

これが今後の僕の人生のテーマです。
もう多分ブレないと思う。
そのぐらい今回は自分の中に深く潜って考えました。
今思えば最近個人開発してたのも全部ここに繋がってるし、仕事中に芽生えた問題意識とか発見もそれに紐づいている気がする。

で、じゃあその「楽しく働く」って何なのさ? をちゃんと言語化すべきだろうと思って、Claudeと一緒に議論して作ったものが今回の記事です。

我ながらこれめっちゃいい。これを活かした仕事をしたいなというモチベーションが今自分の中で燃え上がっています。笑
ご興味持たれた方はぜひご連絡ください。


仕事における「楽しさ」10要素モデル

1. 目的

本資料は、仕事における「楽しさ」の構造と効用を、既存の心理学・組織論・仕事設計研究に基づいて整理することを目的とする。

「楽しさ」は問題を直接解決するわけではない。しかし、問題を解決するためのエネルギーになる。

逆に「楽しさ」が欠けると、そのエネルギーが枯渇し、悪循環に陥りやすい。

本資料では、この「楽しさ」を情緒論ではなく、アウトプットを生み出す原動力の構造として扱う。

仕事における「楽しさ」とは、感情だけではなく、人と環境の相互作用が無理なく噛み合っている状態である。
10要素モデルは、この「噛み合い」の構造を分解し、どこに介入すれば好循環が生まれるかを示す地図である。


2. モデル概要

働くことの楽しさ を考える時、以下の10の要素に分解して考えることができる。

2.1 要素の役割分類

要素 説明 役割
帰属 組織・上司との方向性の一致。他の要素を規定する 基盤
自律 自分で決めたい、という内発的動機 動機源
承認 帰属先から認められたい、という外発的動機 動機源
内容 役割(What)と取り組み(How)。仕事そのものの面白さ 対象
快適さ 認知負荷・ストレスの少なさ 効率係数
協働 同僚との横の関係性、心理的安全性 効率係数
達成 目標達成、進捗、成功体験(Output) 実績
貢献 誰かの役に立っている実感(Output) 実績
成長 自分が変化している感覚(Outcome) 成果
感謝 他者から感謝される体験(Outcome) 成果

(補足: 読みやすさのため、以降も単純に「自律」「承認」といった感じで記述するが、本来ここは「自律の楽しさ」「承認の楽しさ」と頭の中で適宜読み替えた方が、記述されていることのイメージがより鮮明になる)

2.2 ネットワーク図

モデル図

2.3 図式表現

                                                 【実績】        【成果】
帰属 → (自律 | 承認) × 内容 × (快適さ + 協働) = (達成 | 貢献) → (成長 | 感謝)
  ▲                                                                  │
  └────────────────────────── 評価・強化 ────────────────────────────┘

具体例で理解する10要素


3. 各要素の詳細

帰属(Belonging / Fit)

定義: 組織のミッション・価値観との合致、および評価者(上司)との方向性の一致。「何のために働くか」「誰に認められたいか」が自分と合っているという感覚。

性質: 単なる居心地の良さではなく、組織が目指す方向と自分の価値観が重なっている状態。上司は組織の方向性を体現する存在であり、「この上司に認められたい」は「この上司が代表する方向性の中で評価されたい」ということを意味する。

役割: 複数の要素に影響を与える基盤。動機と内容の両方を方向づけ、承認の対象を規定する。

影響先 経路
動機 「何のためにやるか」を方向づける
承認 「誰に認められたいか」の対象を規定する
内容 何をやるか(アサイン)、何に価値があるかを規定する
自律 成長を評価し、「任せてもらえる」と裁量が広がる

対応する理論: Person-Organization Fit理論、組織アイデンティティ研究、リーダーシップ研究


自律(Autonomy)

定義: 役割(What)を自分で決めたいという感覚。内発的動機。

性質: 会社の方向性の中で、自分の担当領域や役割を相談しながら決められる楽しさ。完全に決めてもらうより、自分で関与したいという欲求。帰属によって「任せてもらえる範囲」が規定される。

到達点: 達成を経て成長(自分が変わる)に向かいやすい。

対応する理論: Self-Determination Theory


承認(Recognition)

定義: 帰属先(組織・上司)から認められる、期待される、評価されるという感覚。外発的動機。

性質: 給与、名誉、評価など。「この人に認められたい」「この組織で評価されたい」という欲求。帰属によって「誰に認められたいか」が規定される。

到達点: 貢献を経て感謝(他者からの承認)に向かいやすい。

対応する理論: Herzbergの動機づけ要因、外発的動機づけ研究


内容(Interest / Meaning)

定義: 仕事そのものの面白さ、知的刺激。**役割(What)取り組み(How)**の2つの側面がある。

性質:

  • 役割(What): 何をやるか、どんな役割を担うか。帰属(何に価値があるか)と動機源(自律・承認)によって決まる。
  • 取り組み(How): 決まった役割に対し、どう進めるか。やり方の工夫、問題解決、創意工夫の余地。効率係数(快適さ・協働)がこのフェーズの変換効率を左右する。

対応する理論: Job Characteristics Model、フロー理論


快適さ(Fluency)

定義: ツール・プロセス・情報流通の円滑さ。「道具を使う楽しさ、気持ちよさ」「無駄な会議がない」

役割: 内容→実績の変換効率を左右する。

測定・改善: 達成状況の週次モニタリング、業務時間の可視化、プロセス改善。

対応する理論: Processing Fluency、認知負荷理論


協働(Collaboration)

定義: チーム・同僚との関係性、心理的安全性。「仲間といる楽しさ」「このチームが好き」

性質: 日々の横の関係性に根ざす。帰属(方向性のフィット+評価者との関係)とは異なり、序列に関係ない同僚との関係の質を指す。相談しやすさ、助け合い、チームの雰囲気。

役割: 内容→実績の変換効率を左右する。関係性が良いと、コミュニケーションが円滑になり、実績が出やすくなる。

測定・改善: 従業員サーベイ、チームビルディング、情報共有の仕組み。

対応する理論: 心理的安全性研究(Edmondson)、Self-Determination TheoryのRelatedness


達成(Achievement)

定義: 目標達成、進捗、成功体験。

性質: 内容に取り組んだ結果として得られる。直接「作る」ものではなく、構造が整った結果として現れる。

逆流効果: 達成は環境を変える力になる(快適さへの発言力、協働における信頼蓄積)。


貢献(Contribution)

定義: 誰かの役に立っている、社会にインパクトを与えている実感。

性質: 承認を動機源とする場合に特に重要。自分の内的体験であり、相手からのフィードバックがなくても感じうる。

逆流効果: 貢献は帰属を強化する(他者に価値を届けることで関係性が深まる)。


成長(Growth)

定義: できなかったことができるようになる実感。自分が変化している感覚。

性質: 自律を動機源とする場合に特に重要。実績(達成・貢献)という「点」ではなく、変化という「線」の体験。実績から自分に還ってくるもの。成功だけでなく失敗からも学べるという意味で、成長は必ずしもポジティブな結果を前提としない。経験を振り返り、次に活かせると感じられることが成長実感を支える。

評価ループ: 成長は帰属先(組織・上司)に評価され、その結果が自律(裁量拡大)と承認(認められた)にフィードバックされる。


感謝(Gratitude)

定義: 周囲から「ありがとう」「助かった」と言われる体験。他者からの外的フィードバック。

性質: 実績(達成・貢献)の後に発生する。貢献が「自分が役に立てた」という内的実感であるのに対し、感謝は「相手から認められた」という外的体験。実績から他者経由で還ってくるもの。

役割: 貢献の実感を強化し、承認ループを補完する。

逆流効果: 感謝は帰属を強化する(感謝のやり取りが関係性を深める)。また、次の動機(承認欲求)にもつながる。

対応する理論: 社会的交換理論、感謝研究(Emmons)

注: 貢献と感謝の関係は以下のように整理できる:

  • 貢献あり・感謝あり:最も充実した状態
  • 貢献あり・感謝なし:やりがいはあるが、認められていない感覚が残りうる
  • 貢献なし・感謝あり:表面的な感謝に違和感を覚えうる
  • 貢献なし・感謝なし:実績の実感が得られない状態

4. 因果モデル

4.1 ポジティブな循環

このモデルがうまく機能すると、以下のような好循環が生まれる。

「成長のスパイラル」

実績を出す → 成長を実感 → 帰属先に評価される → 裁量が広がる → より挑戦的な内容に取り組める → さらに実績が出る

「感謝のスパイラル」

貢献する → 感謝される → 承認欲求が満たされる → もっと貢献したくなる → 帰属意識が強まる → より良い仕事ができる

「環境改善のスパイラル」

実績を出す → 発言力が増す → 快適さの改善を提案できる → 効率が上がる → さらに実績が出しやすくなる

好循環のポイントは、実績→成果→帰属→動機→実績 というループが回り始めること。一度回り始めると、環境(快適さ・協働)も改善され、次の実績が出しやすくなる。


4.2 ネガティブな循環

逆に、どこかが噛み合わないと悪循環に陥りやすい。

「沈黙のスパイラル」

協働が弱い → 快適さの問題を言えない → 快適さが悪化 → 余裕がなくなり協働も悪化

「評価されないスパイラル」

成長が評価されない → 裁量が広がらない → 挑戦できない → 成長機会が減る → モチベーション低下

「帰属ミスマッチのスパイラル」

帰属がフィットしない → 承認の対象がズレる → 頑張っても認められない → 動機が湧かない → 実績が出ない

「優秀な人から辞めるスパイラル」

帰属・協働が脆弱 → 問題を認識している人ほどストレス → 優秀な人から離脱 → さらに悪化

悪循環のポイントは、帰属のミスマッチ実績が出ない状況が起点になりやすいこと。実績が出ないと環境を変える力が得られず、抜け出しにくくなる。


5. 帰属と協働の役割

帰属と協働は混同されやすいが、本モデルでは以下のように区別する。

要素 役割 内容
帰属 基盤 組織のミッション・価値観との合致+評価者(上司)との方向性の一致
協働 効率係数 チーム・同僚との関係性、心理的安全性(序列に関係ない横の繋がり)

5.1 帰属は「何のために」「誰に認められたいか」を方向づける

組織が目指す方向と自分の価値観が重なっているかどうか、そして上司との方向性が合っているかどうかは、仕事のあらゆる側面を規定する:

  • 何をやるか(アサイン)、何に価値があるか
  • 動機の方向性(「この会社のためにやりたい」)
  • 誰に認められたいか(承認の対象)
  • 成長がどう評価されるか
  • 任せてもらえる範囲(自律の幅)

「面白さ」と「価値」の関係

「何を面白いと感じるか」は働く人の主観であり、帰属先が変えられるものではない。一方、「何に価値があるか」は帰属先(組織・上司)が定義する。

帰属のフィットとは、この両者が重なっている状態を指す:

  • 自分が面白いと感じること ≒ 帰属先が価値とすること

このフィットがあると、動機と評価が自然に噛み合い、好循環に入りやすい。逆にミスマッチがあると、「頑張っても認められない」「評価されても嬉しくない」という状態になりやすい。

帰属の二面性:組織と上司

帰属には「組織との方向性」と「上司との方向性」の二つの側面がある。理想的には両方がフィットしているが、ズレが生じることもある:

パターン 状態
組織◯・上司◯ 最もフィットした状態。好循環に入りやすい
組織◯・上司✕ 会社は好きだが、直属の上司とは合わない。評価ループが回りにくい
組織✕・上司◯ 上司との関係は良いが、会社の方向性に疑問がある。中長期的な動機が湧きにくい
組織✕・上司✕ 帰属のミスマッチ。悪循環に陥りやすい

帰属と自律の関係

帰属は自律(任せてもらえる範囲)を規定する。このループは以下のように回る:

  1. 帰属がフィットしている → 信頼が生まれやすい
  2. 実績を出す → 評価される
  3. 評価される → 裁量が広がる(自律の拡大)
  4. 裁量が広がる → より挑戦的な内容に取り組める
  5. 成長する → さらに信頼が深まる

帰属がフィットしていないと、実績を出しても「任せよう」という判断につながりにくく、自律が広がらない。

5.2 協働は「誰と」を規定する

日々の横の関係性の質は、実績を出すための効率を左右する:

  • コミュニケーションの円滑さ
  • 困ったときに相談できるか
  • チームの雰囲気、助け合い

5.3 帰属と協働の組み合わせ

帰属(方向性+評価者)がフィットしていても協働(横の関係性)が悪いと「信じてるけど辛い」状態になる。逆に協働が良くても帰属がフィットしていないと「居心地はいいけどやりがいがない」状態になる。両方が揃って初めて好循環に入りやすい。


6. 診断フレームワーク

各要素について、「問い」と「低い場合の兆候」を整理する。

要素 問い 低い兆候
帰属 この組織・上司が目指す方向に共感できるか? 会議で発言が減る、成果への関心が薄れる、「なんか違う」という漠然とした違和感
自律 自分で決められている感覚はあるか? 指示待ちになる、提案しなくなる、「どうせ決まってるし」という諦め
承認 認められている、期待されていると感じるか? 頑張る理由が見つからない、評価面談への関心低下、「見てもらえていない」感覚
内容 この仕事のどこに面白さを感じるか? 作業感が強い、時間が経つのが遅い、工夫する気が起きない
快適さ 日々の業務で無駄・摩擦を感じることはないか? ツールへの不満、会議疲れ、「本来の仕事ができない」感覚
協働 このチーム・同僚と働きたいと思えるか? 相談しなくなる、一人で抱える、チームへの帰属意識の低下
達成 最近、手応えを感じた瞬間はあるか? 進んでいる感覚がない、ゴールが見えない、達成感の欠如
貢献 誰かの役に立っていると感じるか? 「これ意味あるのかな」という疑問、インパクトが見えない
成長 自分が変化・成長していると感じるか? 停滞感、「去年と同じことをしている」感覚、学びがない
感謝 最近、誰かに感謝されたことはあるか? フィードバックがない、「やって当たり前」扱い、孤立感

7. 職場での実践

各要素を改善するための具体的なアクションを、個人・チーム・組織の視点で整理する。

7.1 要素別の対処法

要素 個人でできること チーム・組織でできること
帰属 上司との1on1で方向性を確認、異動・転職の検討 ミッション浸透、バリュー共有、カルチャーサーベイ
自律 小さな裁量から始める、任せてほしい範囲を伝える 裁量の可視化、権限委譲の仕組み
承認 フィードバックを求める、期待値を上司と擦り合わせる フィードバック機会の設計、評価の透明化
内容 やり方を変えてみる、面白いと感じる部分を探す ジョブクラフティング支援、アサインの最適化
快適さ 具体的な改善提案、ツール導入の働きかけ ワークフロー自動化、ナレッジ管理、会議削減
協働 雑談の機会を増やす、困ったら相談する 1on1支援、チームビルディング、心理的安全性の醸成
達成 目標を小さく分解、進捗を可視化する OKRツール、マイルストーン設定
貢献 顧客・ユーザーの声を聞く、影響範囲を確認 インパクトの可視化、顧客の声の共有
成長 新しい挑戦を求める、スキルの棚卸し スキル可視化、学習機会の提供
感謝 自分から感謝を伝える、成果を共有する 感謝を伝え合う仕組み、ピアボーナス、サンクスカード

7.2 協働が弱い環境での工夫

協働が弱い組織では、問題が放置されやすい。「関係性がなくても機能する仕組み」を整えることで、協働の弱さを補完できる。

前提 対処の方向性
個人が声を上げにくい 匿名で問題を収集する仕組み
上司に直接言えない データで客観的に可視化する
問題が放置されやすい 定期的にリマインド・再提示する

7.3 思想としての「整える」

職場環境の改善において、「管理する」ではなく「整える」という思想が有用である。人を監視・評価する発想ではなく、人が自然と力を発揮できる環境を設計する発想。このモデルは、その設計の指針を提供する。


8. 考察

8.1 採用・異動と帰属

採用も異動も、本質的には「帰属の設計」である。

従来の採用・配置は「この仕事ができるか」(スキル)や「実績を出せるか」に焦点が当たりやすい。しかし帰属がミスマッチしていると、他の要素をどれだけ整えても噛み合わない。逆に、帰属がフィットしていれば、好循環の起点になる。

採用・異動を検討する際に問うべきは:

  • この人と組織の方向性は合っているか?
  • この上司・チームとの相性はどうか?
  • この人の動機源(自律優位か承認優位か)と、評価の仕方は合っているか?

「誰をどこに配置するか」は、帰属という基盤を設計する行為である。


8.2 個人のキャリア選択への示唆

転職や異動を検討する際、このフレームは「自分にとって何が大事か」を整理する補助線になる。

帰属:方向性のフィットを見極める

「自分が面白いと感じること」と「その会社・上司が価値とすること」が重なっているかどうか。これが帰属のフィットである。職務内容(何をやるか)だけでなく、組織の方向性や上司との相性を見ることが重要になる。

自律と内容:決めるか、やるか

自律は「何をやるか・どんな役割を担うか」を決める楽しさ。内容は「決まったことをどう進めるか」の楽しさ。自分がどちらに楽しさを感じるタイプかを知ると、環境選びの精度が上がる。裁量を求めるのか、やり方の工夫に没頭したいのか。

効率係数:快適さと協働

どれだけ帰属がフィットしていても、日々の業務が非効率だったり、チームの関係性が悪ければ消耗する。「ツール・プロセスは整っているか」「相談しやすい雰囲気か」も、見落としがちだが重要な観点。

実績と成果:何が還ってくるか

達成・貢献は「やったこと」の手応え。成長・感謝は「その結果、自分に何が還ってくるか」。自分が何を求めているかを意識すると、入社後のギャップを減らせる。


8.3 組織設計への示唆

組織やチームを設計する立場から、このモデルは介入ポイントを整理する補助線になる。

帰属の設計:方向性と価値の明示

帰属とは「組織や上司が何に価値を置くか」と「本人が何を面白いと感じるか」のフィットである。組織設計においては、前者を明確にすることが出発点となる。

組織としてのミッション・ビジョンだけでなく、日々の業務で「何が良い仕事とされるか」を具体的に示すこと。そして、それを上司が一貫して体現すること。メンバーにとって、上司は帰属先の象徴である。上司の言動が組織の価値と矛盾していると、帰属は揺らぐ。

評価制度:成長から自律・承認へのループ

評価制度とは、成長をどう認識し、それを自律(裁量拡大)や承認(認められた感覚)にどう変換するかの仕組みである。

  • 成長を正しく捉えているか?(何ができるようになったか)
  • 評価が自律につながっているか?(任せる範囲が広がるか)
  • 評価が承認として伝わっているか?(認められた実感があるか)

このループが機能していないと、「頑張っても報われない」という感覚が生まれ、悪循環に陥る。

効率係数の整備:協働と環境

協働は横の関係性であり、チームの心理的安全性や相談のしやすさに関わる。環境はツール・プロセスの整備である。これらは動機源ではないが、低いと動機を消耗させる。組織として意図的に整備すべき領域である。

自律と内容の割り当て

自律は「何をやるか・どんな役割を担うか」を決める楽しさ。内容は「どう進めるか」の楽しさ。メンバーによってどちらに楽しさを感じるかは異なる。全員に同じ裁量を与えるのではなく、個人の志向に応じて「決める余地」と「やり方の余地」のバランスを調整することが、組織としてのマネジメントになる。


8.4 モデルの限界

本モデルはあくまで「思考の補助線」である。同じ要素でも人によって重みや意味は異なるし、業界・職種・ライフステージによって関係性も変わりうる。「唯一の正解」ではなく、自分の状況を整理するためのツールとして使うのが適切である。


参考資料:理論的根拠

本モデルは、以下の研究・理論と整合する:

  • Self-Determination Theory(Deci & Ryan):自律・有能感・関係性
  • Job Characteristics Model(Hackman & Oldham):仕事の特性と動機づけ
  • 心理的安全性研究(Edmondson):チームの学習行動
  • Person-Organization Fit理論(Kristof):個人と組織の適合
  • フロー理論(Csikszentmihalyi):没入体験
  • 認知心理学(Processing Fluency、認知負荷理論):認知的快適さ
  • Herzbergの動機づけ・衛生要因理論:満足と不満足の二要因
  • 組織スラック研究:余白と創造性
  • 感謝研究(Emmons & McCullough):感謝と幸福感の関係
  • 社会的交換理論:互恵性と関係性構築

具体例で理解する10要素

要素別ケーススタディ

帰属:転職したら給料が下がったのにやりがいが増えた

状況: 前職では年収は高かったが「なんか違う」という違和感があった。転職後は年収が下がったが、毎日が充実している。

解釈: これは帰属のフィットが改善したケース。前職では組織の方向性と自分の価値観がズレていたため、給与(承認の一形態)があっても動機が湧かなかった。転職先では「自分が面白いと感じること」と「組織が価値とすること」が重なり、帰属がフィットした結果、他の要素も連動して好循環に入った。

示唆: 帰属は基盤であり、他の要素を規定する。帰属がミスマッチだと、報酬を上げても根本的な解決にならない。


自律:指示待ちから脱却できない若手メンバー

状況: 「もっと主体的に動いてほしい」と思うが、いつも指示を待っている。本人も「何をすればいいかわからない」と言う。

解釈: 自律の問題に見えるが、原因は複数ありうる。

  • 帰属の問題: 組織の方向性が不明確で、何をすれば評価されるかわからない
  • 自律の問題: 裁量を与えられた経験がなく、「決める」こと自体に慣れていない
  • 承認の問題: 失敗すると怒られる環境で、リスクを取れない

示唆: 「主体性がない」と個人の問題にする前に、帰属(方向性の明示)や承認(失敗を許容する評価)を確認する。小さな裁量から任せ、成功体験を積ませることで自律は育つ。


承認:頑張っているのに評価されないと感じる

状況: 自分なりに成果を出しているつもりだが、評価面談で思ったより評価が低い。「見てもらえていない」と感じる。

解釈: 承認の問題だが、根本は帰属のズレかもしれない。

  • 帰属のズレ: 自分が「価値がある」と思うことと、上司・組織が「価値がある」と思うことが違う
  • 承認の伝達不足: 評価はしているが、本人に伝わっていない
  • 期待値のズレ: 上司の期待と本人の認識が合っていない

示唆: 「評価されない」と感じたら、まず「何が評価されるのか」を上司と擦り合わせる。帰属のフィットを確認し、期待値を明示的にすることで、承認のループが回りやすくなる。


内容:仕事が「作業」になってしまい面白くない

状況: 毎日同じことの繰り返し。工夫の余地がなく、ただこなすだけになっている。

解釈: 内容の問題。「どう進めるか」の楽しさが失われている。

  • ルーティン化: 慣れによって新鮮さがなくなった
  • 裁量の欠如: やり方が決められていて、工夫の余地がない
  • 意味の喪失: 何のためにやっているかが見えなくなった

示唆: 内容を変える方法は複数ある。やり方を変えてみる(プロセス改善)、新しい挑戦を求める(自律の拡大)、意味を再確認する(帰属との接続)。「作業」を「仕事」に戻すには、どこかに工夫や意味を見出す必要がある。


快適さ:ツールが古くて生産性が上がらない

状況: 社内システムが使いにくい、承認フローが煩雑、情報が散在している。本来の仕事に集中できない。

解釈: 快適さの問題。内容→実績の変換効率が下がっている。

  • ツールの問題: 古い、遅い、使いにくい
  • プロセスの問題: 無駄な承認、冗長な会議
  • 情報流通の問題: 必要な情報にアクセスしにくい

示唆: 快適さは動機源ではないが、低いと動機を消耗させる。改善には実績と発言力が必要なことが多い。まず小さな改善から始め、実績を積んで発言力を得るか、データで客観的に問題を可視化する。


協働:リモートワークでチームの一体感がなくなった

状況: コロナ以降フルリモートになり、効率は上がったが「チーム感」がなくなった。雑談がなく、困っても相談しにくい。

解釈: 協働の問題。横の関係性が希薄になっている。

  • 偶発的コミュニケーションの減少: 廊下ですれ違う、ランチで話すなどがなくなった
  • 相談のハードル上昇: わざわざSlackで聞くほどでもない、という遠慮
  • チームの雰囲気の不可視化: 誰が困っているかわからない

示唆: リモートでは協働を意図的に設計する必要がある。雑談チャンネル、バーチャルコーヒー、週次の非業務ミーティングなど。「関係性がなくても回る仕組み」と「関係性を育てる機会」の両方が必要。


達成:目標が曖昧でゴールが見えない

状況: 何をもって「できた」なのかわからない。進んでいる感覚がなく、達成感がない。

解釈: 達成の問題。ゴールが不明確で手応えが得られない。

  • 目標の曖昧さ: 「いい感じにして」「なるはやで」など
  • 進捗の不可視: どこまで終わったかわからない
  • 完了の定義がない: いつ終わりなのかが不明確

示唆: 達成感を得るには、ゴールを小さく・明確にする。大きな目標を分解し、マイルストーンを設定する。「今日これができた」という小さな達成の積み重ねが、モチベーションを維持する。


貢献:自分の仕事が誰の役に立っているかわからない

状況: 言われたことはやっているが、それが誰にどう届いているのか見えない。「これ意味あるのかな」と思う。

解釈: 貢献の問題。自分の仕事のインパクトが見えない。

  • 顧客との距離: エンドユーザーの顔が見えない
  • フィードバックの欠如: 使われているかどうかわからない
  • 全体像の不在: 自分のパーツがどう組み合わさるかわからない

示唆: 貢献実感を得るには、顧客の声を聞く機会を作る、影響範囲を可視化する、「あなたの仕事がこう役立った」というフィードバックを意図的に伝える。組織としてインパクトを共有する仕組みが重要。


成長:同じことの繰り返しで成長している気がしない

状況: 3年目だが、1年目と同じことをしている気がする。新しいことを学んでいない。停滞感がある。

解釈: 成長の問題。変化という「線」の体験が得られていない。

  • 挑戦の機会がない: 慣れた仕事ばかりで新しい経験がない
  • 振り返りがない: 経験から学ぶ機会がない
  • フィードバックがない: 自分の成長を客観視できない

示唆: 成長は成功だけでなく失敗からも得られる。新しい挑戦を求める(自律の拡大)、経験を振り返る習慣を作る、スキルの棚卸しをして変化を可視化する。成長実感がないと動機が枯渇しやすい。


感謝:やって当たり前扱いでフィードバックがない

状況: 頼まれたことをやっても「ありがとう」がない。やって当然という空気。孤立感がある。

解釈: 感謝の問題。外的フィードバックが欠如している。

  • 感謝を伝える文化がない: 言わなくてもわかるだろう、という前提
  • 見えない仕事: 裏方の仕事ほど感謝されにくい
  • 当たり前化: 継続的な貢献ほど「当然」になりやすい

示唆: 感謝は承認ループを補完する。組織として感謝を伝え合う仕組み(ピアボーナス、サンクスカード)を作る。個人としては、まず自分から感謝を伝える。感謝のやり取りは関係性を深め、帰属を強化する。


スクラム開発がうまく回らないとき

スクラムがうまく機能しない状況は、「快適さ」と「協働」のどちらか(または両方)に問題があることが多い。

快適さの問題(ツール・プロセス・情報流通)

  • スプリントバックログの管理ツールが使いにくく、タスクの状態がわからない
  • デイリースクラムが形骸化して、ただの報告会になっている
  • バックログのリファインメントが不十分で、見積もりがズレまくる
  • レトロスペクティブで出た改善案が実行されずに放置される
  • ドキュメントや仕様が散在していて、毎回探すのに時間がかかる

→ 「やり方・仕組み」の問題。人間関係が良くても起きうる。

協働の問題(横の関係性・心理的安全性)

  • デイリースクラムで困っていることを言い出せない
  • レトロスペクティブで本音が出ない、当たり障りのない意見ばかり
  • 「あの人に聞くと怒られそう」で質問を避ける
  • ペアプロやモブプロを提案しにくい雰囲気
  • 誰かがブロッカーになっていても指摘できない

→ 「関係性・雰囲気」の問題。ツールが整っていても起きうる。

両方が絡むケース

  • レトロで改善案は出るが実行されない

    • 快適さ:改善を実行するプロセスがない
    • 協働:「どうせ変わらない」という諦めムード
  • スプリントレビューで正直なフィードバックが出ない

    • 快適さ:レビューの進め方が形式的
    • 協働:ステークホルダーとの関係性で本音が言えない
  • 見積もりが毎回外れる

    • 快適さ:リファインメントのやり方が雑
    • 協働:「わからない」と言えない、見積もりに異論を唱えにくい

見分け方のヒント

観点 快適さ寄り 協働寄り
原因の所在 仕組み・ルール・ツール 人間関係・雰囲気・信頼
改善の方向 プロセス変更で解決しうる 関係性構築が必要
症状 「やり方がわからない」「面倒」 「言い出せない」「避けたい」
誰が変えても同じか? メンバーが変わっても起きる 特定の関係性で起きる

3. 各要素の詳細に戻る


追記:
最初にこの記事を書く発端になった、夜中にとったメモ

  • 「仕事を楽しめるようにする」がプロダクトを作る。が自分の人生テーマなのかもしれない。仕事のQOL (QOW かな?) を上げる。楽しむことにはすごい力がある
  • 楽しい面白いは問題を直接解決しないが、それを導くエネルギーになるので重要
  • 仕事を楽しくするにはいくつか軸があって、ツールの良さ、何を探求したいかとか自分のWHY、誰と働くか,,、etc 明らかにしたい

追々記:

  • 感謝 の項目を加えて大幅に加筆修正
  • 「楽しい」は生産性の重要な指標 (飲み会は会社のバロメータって言ったりするけどほんとそうよ)